劣等財

お財布が潤うと、買い物かごから自然と姿を消すカップ麺のような存在です。

定義 所得(収入)が増えるにつれて、かえって購入量が減ってしまう商品やサービスのことです。通常はお金に余裕ができると買い物を増やしますが、暮らしが豊かになることでより良い選択肢へと乗り換えられ、自然と消費が減っていく商品があります。

お財布に余裕ができると、なぜカップ麺を食べなくなるの?

学生時代など懐事情が厳しいときは、コンビニのカップ麺やおにぎりで手軽に食事を済ませることがよくあります。少ないお金ですぐにお腹を満たせる、ありがたい味方だからです。

就職して毎月安定したお給料をもらえるようになると、食卓の風景が少しずつ変わってきます。カップ麺の代わりに新鮮なサラダや栄養バランスの取れた定食を選ぶ日が増えていきますよね。このように、所得が増えたときにかえって消費が減る商品のことを、経済学では劣等財(下級財)と呼びます。

私たちが普段目にするほとんどの商品は、収入が増えるほど購入量も増える「正常財」に当たります。お給料が上がれば洋服を新調したり、外食の回数を増やしたりするのと同じです。しかし劣等財は、所得の変化と消費量の変化が正反対に動くというユニークな性質を持っています。

所得増加に伴う正常財・下級財の消費変化比較図 所得増 (給料UP) 正常財 (外食・生鮮) 消費増 ▲ 下級財(即席麺等) 消費減 ▼

品質が劣っているわけではありません

「劣等」という漢字のイメージから、品質が悪い欠陥品や粗悪品だと誤解されがちです。しかし、経済学における劣等財という呼び名は、商品の品質や価値を見下すような評価基準では決してありません。

劣等財はあくまでも、所得と購入量の関係だけを基準にした経済学上の分類名です。例えば、地下鉄や路線バスはとても安全で便利な優れた交通手段です。しかし、収入が大きく増えてマイカーを購入する人が増えると、公共交通機関の利用頻度が減ることがあります。このとき、公共交通機関はマイカーという選択肢に対して劣等財としての役割を持つことになります。

ある商品が劣等財になるかどうかは、人々の好みやより魅力的な代替財(代わりに消費できるもの)が存在するかによって決まります。同じ商品でも、個人のこだわりや経済状況、社会環境によって、ある人にとっては正常財になり、別の人にとっては劣等財になることもあるのです。

経済学の目線でもう少し詳しく

経済学では、所得が1%増加したときに商品の需要量が何%変化するかを測定する指標があり、これを「需要の所得弾力性」と呼びます。所得が増えると購入量も増える一般的な正常財の場合、この弾力性の数値は0より大きいプラス(正の値)になります。

一方、劣等財は所得が増えるほど購入量が減るため、需要の所得弾力性が0より小さいマイナス(負の値)として計算されます。お財布が潤うこと自体が、その商品への需要を押し出す力として働くわけです。

さらに深く掘り下げると、劣等財の中には「価格が安くなったのに、なぜか人々が買わなくなる」という極めて例外的な商品が存在します。これを発見者の名前にちなんで「ギッフェン財」と呼びます。ただし、ギッフェン財は歴史的な大飢饉のような極めて特殊な状況で見られる例外であり、ほとんどの劣等財は「価格が下がれば需要が増える」という一般的な市場の法則に従います。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

劣等財とは、品質が粗悪だったり欠陥があったりする商品のことである。

✓ 事実

品質の良し悪しを表す言葉ではありません。所得が増えた際に、消費者がより好ましい別の選択肢へ移行することで購入を減らす商品を指す経済学用語です。

🧺 日常で出会う場面

1 収入が増えた社会人が、コンビニ弁当の代わりに専門店での外食を選ぶようになり、コンビニ弁当の消費が減る。
2 暮らしに余裕ができたことで、中古家具の代わりに新品の家具を買うようになり、中古家具の消費が減少する。
💡 つまり ひとことで

劣等財は品質が悪い商品ではなく、所得が増えるにつれてより良い選択肢へ乗り換えられ、消費が減っていく商品のことです。