自由貿易協定(FTA)
国境に設けた関税という税金の検問所をなくし、まるでお隣同士のように自由にモノを売り買いしようという約束です。
定義 自由貿易協定(FTA)とは、2つ以上の国や地域の間でモノやサービスをやり取りする際にかかる関税(国境を越えるときにかかる税金)や、さまざまな貿易の壁を減らしたりなくしたりする公式な取り決めです。
国境の高い壁を低くする約束
本来、外国からモノを輸入するときには国境で「関税」(外国の製品に課される税金)がかかります。たとえば、1,000円の輸入果物に30%の関税がつくと、お店では1,300円以上の値札がつくことになります。こうした税金は、輸入品の価格を上げることで国内で作られたモノを守る役割を果たしています。
自由貿易協定を結ぶと、お互いに課していた税金の壁を低くしたり、完全に撤廃したりします。協定が結ばれれば、輸入果物の価格が元の1,000円前後に下がり、消費者はより豊富な商品をリーズナブルに選べるようになります。普段のお買い物の負担が軽くなるメリットもあります。
自国の企業にとっても、はるかに大きな活躍の場が広がります。相手国の市場に自動車や精密機器などを輸出する際に関税がかからないため、価格競争力を大きく高めることができます。限られた国内市場を越えて、何億人もの消費者にモノを届けるチャンスが広がるわけです。
こうしてお互いの国が得意なモノを自由に融通し合えば、全体の貿易量がグンと増えます。結果として両国の経済規模がともに拡大し、新たな雇用が生まれるという好循環が生まれます。
全員にとって都合が良いわけではありません
自由貿易協定が結ばれると、誰もが手放しで喜べるのでしょうか? 残念ながら必ずしもそうとは限りません。海外への輸出が得意な先端製造業や、安くモノを買える消費者にはプラスになりますが、国内で競合する製品を作っていた生産者には大きなピンチが訪れるからです。
外国から安くて質の良い農産物や畜産物が大量に入ってくると、国内の農家は価格競争で太刀打ちできず、大きな打撃を受けてしまいます。工場でつくる工業製品とは違い、農業は季節や土地の制約があるため、すぐに別の作物や技術へ切り替えるのが難しいからです。このように自由貿易は産業によって明暗が大きく分かれる問題をはらんでいます。
また、工場や仕事がよりコストの安い協定国へ移転することで、国内の雇用が減ってしまう副作用が出ることもあります。特定の産業が衰退すると、その地域全体の経済が冷え込んでしまう恐れもあります。このように、成長の恩恵が社会全体に平等に行き渡らない点が、自由貿易の最大の課題です。
そのため政府は、協定を結ぶ際に影響の大きい品目の関税を10年など長い年月をかけて段階的に撤廃するクッションを設けます。同時に、影響を受ける農林水産業者や中小企業を支えるため、被害対策基金や事業転換支援などのセーフティネットを整備するのが一般的です。
もう少し詳しく言うと
自由貿易協定を単に「関税をゼロに下げるだけの紙」と思われがちです。しかしもう少し詳しく言うと、現代の協定は目に見えるモノの取引だけでなく、経済全体の巨大なルールを統一する作業でもあります。
工業製品だけでなく、金融・通信・医療といったサービス産業の市場も互いに開放します。また、映画や音楽、新薬の特許などを守る知的財産権の保護基準を統一することも重要な項目です。相手国の企業がこちらの法律や制度を信頼し、安心して投資できる環境を整えるのです。
第三国の部品をこっそり混ぜて関税の優遇だけを受けようとする不正を防ぐため、厳格な原産地規則も細かく定められます。服を作るときに糸はどこで紡いだのか、ボタンはどこで付けたのかまで細かくチェックし、本当に協定国で作られたモノだけにメリットを与える仕組みです。
近年では、環境基準や労働者の権利保護に関する条項まで協定に盛り込まれるのが主流となっています。このように現代の自由貿易協定は、国境を越えて経済や社会のルールをすり合わせる総合的な契約書と言えます。
🤔 よくある誤解
自由貿易協定を結べば、その国のすべての品物にかかる関税が翌日すぐにゼロになる。
国内産業が順応できるよう品目に応じて5年や10年かけて段階的に引き下げられるほか、コメなどの重要品目は関税撤廃の対象外とされることもあります。
🧺 日常で出会う場面
国同士の関税や貿易の壁を取り払って取引を活発にしつつ、影響を受ける国内産業を守り調整するための経済的な取り決めです。