浮力
お風呂で無理やり沈めた浮き輪が、手を離した瞬間に水面へポンと飛び出してくる「見えない力」です。
定義 浮力とは、水や空気のような流体(流れる液体や気体)の中に入った物体を、上へ押し上げる力のことです。水中で重いものを持ち上げると空気中よりずっと軽く感じるのも、周りの流体が物体を上へ押し上げて支えてくれているからです。
お風呂でボールを沈めると起こること
お風呂やプールで、ゴムボールや空のペットボトルを水深くへ沈めようとしたことはありませんか? 手に力を入れて押し込むほど、手のひらをグッと押し返してくる強い力を感じるはずです。そして手を離した瞬間、ボールは一気に水面へとポンと飛び出してきます。
このとき、物体を上へと押し上げる力こそが「浮力」です。水の中に入った物体は、四方八方から水圧(水の圧力)を受けます。ここでポイントなのは、水は深くなればなるほど水圧が強くなるということです。そのため、下から押し上げる圧力が、上から押さえつける圧力よりも常に大きくなります。
この上下の圧力差によって、物体は全体として上へ持ち上げられる力を受けることになります。プールの中で友達を軽々とおんぶできるのも、水が下から一緒に持ち上げてくれているからなのです。
この現象は水の中だけで起きるわけではありません。空気も流体(気体)なので、空に浮かぶ風船や私たちの体にも、常に目に見えないわずかな浮力が働いています。
もう少し詳しく:アルキメデスの原理
お湯が並々と張られた湯船に体を沈めると、お湯がザバーンとあふれ出しますよね。物体が水の中に入るためには、自分の体積の分だけ、もともとその場所にあった水を外へ押し出さなければならないからです。
古代ギリシャの数学者アルキメデスは、まさにこの現象から偉大な科学の法則を発見しました。物体が受ける浮力の大きさは、物体が押し退けた流体の重さとぴったり等しくなるという事実です。これを物理学では「アルキメデスの原理」と呼びます。
たとえば、体積が1リットルの物体を完全に水に沈めると、1リットル分(約1キログラム)の水が押し退けられます。すると水は、その物体をぴったり1キログラム分の力(約9.8ニュートン)で力強く上へ支え上げます。
つまり、物体が入り込んだ分だけ押し出された水が、「元の場所を返して!」とばかりに上へ押し戻しているようなものです。押し退けた水が重いほど、物体が受ける浮力も大きくなります。
鉄でできた巨大な船が沈まない理由
小さな鉄の玉やコインを水に入れると、あっという間に底へ沈んでしまいます。それなのに、鉄球の何万倍も重い巨大な鉄の客船やコンテナ船は、なぜ沈まずにプカプカと浮いていられるのでしょうか?
その秘密は、物体の全体の「形」と「密度(物質の詰まり具合)」にあります。船の内部は鉄の塊ではなく、ほとんどが空っぽの空気の部屋になっています。船底を広くて大きなお椀のような形にして、途方もない量の水を押し退けられる構造にしているのが最大のポイントです。
鉄と空気を合わせた船全体の平均の重さよりも、船が押し退けた海水の重さのほうが重くなれば、船は水の上にしっかりと浮かびます。逆に、押し退けた水の重さよりも物体そのものの重さのほうが重ければ、物体は底へと沈んでいきます。
海の中を進む潜水艦もこの原理を巧みに使っています。艦内にあるタンクに海水を取り込むと重くなって沈み、圧縮空気で海水を外へ追い出すと軽くなって(浮力のほうが勝って)、再び水面へと浮上できるのです。
🤔 よくある誤解
重いものは必ず沈み、軽いものは必ず浮く。
浮き沈みを決めるのは重さそのものではなく、「体積あたりの重さ(密度)」と押し退けた流体の量です。何万トンもある鉄の船でも、中を空洞にして体積を大きくすれば大量の水を押し退けられるため、簡単に浮かびます。
🧺 日常で出会う場面
浮力とは、流体の中にある物体が、押し退けた流体の重さと同じ強さで上向きに押し上げられる力のことです。