BIS自己資本比率

荒波が押し寄せても銀行という船が沈まないように備えておく「緊急用ライフジャケット」の厚みです。

定義 銀行が貸し倒れなどの損失を出しても、預金者にちゃんとお金を返せる体力(健全性)がどれくらいあるかを示す指標です。世界の中央銀行が集まる国際決済銀行(BIS)が定めた国際基準です。

なぜ銀行にも「自分のお金」が必要なのでしょうか?

友達から借りたお金だけでお店を始めたと想像してみてください。商売がうまくいっている間は問題ありませんが、ツケ(掛け売り)で商品を渡したお客さんにお金を持ち逃げされたら大変なことになります。自分のお小遣いやへそくり(自己資金)がなければ、信じてお金を預けてくれた友達に1円も返せなくなってしまいますよね。

銀行も本質的にはこれと同じです。銀行が運用しているお金の大半は、私たちから預かった「預金」です。銀行はそのお金を住宅購入者や企業に貸し出し、利息を得て利益を出しています。しかし、お金を借りた人が倒産して返済できなくなると、銀行に大きな穴が空いてしまいます。

このとき銀行が倒れてしまわないためには、人から借りたお金(預金)だけでなく、銀行自身が用意した頑丈な手元資金(自己資本)が十分に必要です。貸出金が焦げ付いて損失が出ても、まずは自分のお金で穴埋めすることで、預金者の大切なお金を守ることができるからです。

BIS自己資本比率の構造と安全基準 自己資本 銀行の純粋な備え リスク加重資産 損失リスクのある貸出 8%以上 推奨安全基準

正確に言うと:リスクの大きさに応じて計算します

BIS自己資本比率を計算するときは、単に「総資産のうち自分の資金が何%か」を見るわけではありません。銀行が運用しているお金は、貸し倒れる危険性(リスク)が投資先によってまったく異なるからです。国が発行する国債なら焦げ付く心配はほとんどありませんが、立ち上げ直後のスタートアップ企業への無担保融資は、返ってこないリスクがはるかに高くなります。

そこで、銀行が持つ資産ごとにリスクの高さを掛け合わせて合算します。これを専門用語でリスクアセット(リスク加重資産)と呼びます。安全な資産には低い掛け率を、危険な貸出には高い掛け率を適用して計算する仕組みです。

つまりBIS自己資本比率とは、「リスクを考慮した資産」に対して「銀行の純粋な自己資本」がどれくらいの割合あるかを表しています。リスクの高いところへ無謀にお金を貸し出すほど分母が大きくなるため、銀行は自己資本を増やすか、貸出リスクを厳密に管理しなければこの数値を維持できません。

8%という魔法の基準線と私たちの生活への影響

国際決済銀行(BIS)は、国際業務を行う銀行に対して最低でも8%以上の自己資本比率を維持するよう厳格な基準を定めました。リスクアセットが100億円なら、最低でも8億円以上の健全な自己資本を持っていなければならないということです。この基準を下回る銀行は経営危機のリスクが高いと見なされ、金融当局から業務改善命令を受けたり、最悪の場合は営業停止処分を受けたりします。

この基準は、私たちの身近な生活にも直結しています。景気が悪くなると、銀行はBIS比率の低下を恐れて融資のハードルをグッと引き上げます。融資の審査を厳しくしたり、リスクが高そうな貸出の満期延長を断って資金を回収したり(貸し渋り・貸し剥がし)するのです。

ニュースで「ある銀行のBIS比率が低下した」と報じられたら、それは銀行の健全性に黄信号が灯ったサインであり、私たちが融資を受けにくくなる前触れだと理解できます。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

BIS比率は、銀行の全預金額に対する融資額の割合(預貸率)を意味する。

✓ 事実

預金と融資の比率ではなく、「リスクを考慮した資産(リスクアセット)」に対する「銀行の純粋な自己資本」の割合です。

🧺 日常で出会う場面

1 2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)の際、多くの銀行が過度なリスク融資で経営難に陥った反省から、世界的にBIS自己資本比率の規制(バーゼル規制)が一層強化されました。
2 経営が悪化した地方銀行や金融機関が自己資本比率の基準値を下回った場合、金融庁から早期是正措置(業務改善命令など)を受けることがあります。
💡 つまり ひとことで

BIS自己資本比率は、銀行が危機的な状況に直面しても倒産せずに耐え抜くための「体力の強さ」を示す国際的な安全基準です。