潮汐発電

バスタブにお湯をいっぱい溜めてから栓を一気に抜いたとき、勢いよく流れ出る水で水車を回すような技術です。

定義 浴槽に溜めた水の栓を抜くと勢いよく水が流れ出るように、満潮と干潮によって上下する海水の水位差を利用して電気を作る技術です。月と太陽の引力によって毎日決まった時間に訪れる規則的な海の動きを、巨大なエネルギーへと変えるクリーンな発電方式です。

1日に2度開く巨大な海のダム

海岸では、1日に約2回、海面が高くなる満潮と低くなる干潮が繰り返されます。干満差(潮位差)が大きい海に巨大な堤防(ダム)と水門を設置しておくと、満潮のときに海水をダムの内側にたっぷり溜め込むことができます。

水で満たされた貯水池の水門を閉じておき、外の海が干潮でぐっと低くなったタイミングで水門を一気に開きます。すると、ダムの中に閉じ込められていた水が外へ向かって勢いよく流れ出し、設置された巨大な水中プロペラ(水車)を猛烈な勢いで回転させます。

このプロペラの回転力で発電機を動かし、大量の電気を生み出します。水が落ちる力で電気を作る水力発電と基本原理は同じですが、川の淡水ではなく海水が周期的に上下する潮位差を活用する点が決定的な違いです。

潮力発電の原理を示す断面図 防潮堤/ダム 貯水池(高水位) 海(干潮・低水位) 落差(水位差) ⚡発電 水中水車

もう少し正確に言うと:潮汐発電と潮流発電は別物です

海から電気を作る方法と聞くと、ひとくくりにイメージしてしまいがちです。しかし、「潮汐発電」「潮流発電」「波力発電」は、エネルギーを取り出す仕組みがまったく異なります。

潮汐発電は海をダムで遮って水位差を作り、水が落ちる落差の力を利用します。一方、潮流発電はダムを造らず、鳴門海峡の急流のように激しく流れる海水のスピード(流速)そのものに風車のようなタービンを設置して発電します。

そして波力発電は、潮の満ち引きではなく風によって海面が波打つ上下の揺れを利用して発電機を回します。このうち、韓国の始華湖(シファホ)発電所のように人工の湖を造って落差で発電する方式が潮汐発電です。

天気に左右されないクリーンエネルギーと環境への課題

太陽光発電は夜や雨の日には発電が難しく、風力発電も風が止まればストップしてしまいます。しかし潮汐発電は、月と地球が引き合う天体の力によって起こるため、天候に関係なくいつどれだけの電気が生まれるかを正確に予測できるという絶大なメリットがあります。

化石燃料を燃やさないため温室効果ガスや大気汚染物質を一切出さない、無尽蔵の再生可能エネルギーです。地球と月が存在する限り、1日2回決まった時間にやってくる頼もしいエネルギー源と言えます。

一方で、海に巨大な堤防を建設するため、干潟が失われたり海の生態系の水の流れが変わってしまったりするという環境負荷も抱えています。海水が自然に出入りできなくなると海洋生物の生息地を奪う恐れがあるため、環境への影響を抑えながらエネルギーを得る技術の研究が続けられています。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

潮汐発電は、風が強くて波が高いほどたくさんの電気を作れる。

✓ 事実

波の揺れを利用するのは「波力発電」です。潮汐発電は波ではなく、月と太陽の引力によって生じる満潮と干潮の水位差(潮位差)を利用します。

🧺 日常で出会う場面

1 韓国・安山(アンサン)の始華湖(シファホ)潮力発電所は、世界最大規模の発電量を誇る代表的な潮汐発電施設です。
2 フランスのランス潮汐発電所は1966年に完成し、半世紀以上にわたって安定して電力を供給し続けています。
💡 つまり ひとことで

満潮と干潮によって生じる海水の高低差(潮位差)を利用して水車を回し、電気を生み出すクリーンな発電方式です。