価格差別
同じ映画館の同じ席に座るのに、制服を着ているかスーツを着ているかでチケット代が変わる不思議なメニュー表のようなものです。
定義 同じモノやサービスを作るコストが全く同じである状況を想像してみてください。このとき、客の属性や購入のタイミングに応じて異なる価格をつけて販売する方法を指します。企業は、客が支払ってもよいと考える上限額に合わせて利益を最大化するためにこの戦略を使います。
なぜ同じ映画を見るのに学生は安いのでしょうか?
映画館のチケット売り場に行くと、同じ時間・同じシアターで映画を観るのにもかかわらず、学生は大人よりもチケット代が安く設定されています。学生を1人席に座らせるのに、大人よりコストがかからないわけではありません。劇場の清掃費や電気代、映画の上映権料は、大人でも学生でも完全に同じです。
それなのに映画館が学生に安く売る理由は何でしょうか? お小遣いやバイト代が限られている学生は、チケット代が高いと映画を観ること自体を諦めてしまいがちです。一方で、社会人は少し値段が高くても、観たい映画であれば喜んで財布を開いてくれる可能性が高いのです。
企業は、客が価格の変化にどれだけ敏感に反応するかを細かく見ています。価格に敏感な層には値段を下げて呼び込み、それほど敏感でない層からは正規の料金をしっかりもらいます。このように消費者の支払意思に応じて価格を変えることが、価格差別の本質です。
飛行機のチケットとスーパーのまとめ買いに潜む秘密
価格差別は、年齢や身分だけでなく、購入するタイミングや数量によっても日常に広く溶け込んでいます。数か月前に事前予約する飛行機のチケットは格安ですが、出発当日の朝に買うチケットは数倍に跳ね上がります。急な出張で移動しなければならないビジネス客は、いくら高くても買わざるを得ないからです。
スーパーで飲み物を1本ずつ単品で買うより、箱買い(まとめ買い)したほうが1本あたりの値段がぐっと安くなるのも同じ仕組みです。たくさん買ってくれる客に割引を提供し、一度に大量に買い込んでもらうよう誘導するのです。
朝早い時間帯に客を集める映画館のモーニングショー割引や、夜のデパ地下・スーパーの見切り品セールも同様です。企業は客が置かれた時間や状況を巧みに切り分け、それぞれ異なる条件の価格表を提示することで、売れ残りを防ぎながら売上を最大限に引き上げているのです。
もう少し詳しく:価格差別が成功するための必須条件
もう少し厳密に言うと、企業が好き勝手にバラバラな価格を付ければいつでも価格差別が成り立つ、というわけではありません。この戦略が市場で成功するためには、必ず満たさなければならない厳しい条件があります。
最大の決定的な条件は、購入者同士の転売を完全に防ぐことです。もし学生が1,000円で買った映画チケットを、劇場の前で大人に1,500円で転売できてしまったらどうなるでしょうか? 大人は正規窓口で2,000円払わずに転売チケットを買い、映画館は大損してしまいます。そのため、入場時に学生証の提示を徹底したり、チケットに名前を印字して譲渡を禁止したりするのです。
また、企業が市場である程度の独占力を持っていることも欠かせません。もし隣のライバル店がまったく同じ商品を誰にでも激安で売っていたら、客はそちらに流れてしまうからです。市場をきれいにグループ分けでき、かつ転売を阻止できるときに初めて、価格差別は機能します。
🤔 よくある誤解
価格差別は、客を不当に差別したり法律に違反したりする行為である。
経済学における「価格差別」は倫理的な非難ではなく、客の支払い能力や状況に合わせて価格を変え、利益を最大化するための合理的なマーケティング戦略を指します。
飛行機のファーストクラスがエコノミークラスより高いのも価格差別の一種である。
ファーストクラスは広い座席や豪華な機内食など、コスト(原価)自体が圧倒的に多くかかっています。提供コストが同じなのに異なる価格をつける場合のみを「価格差別」と呼びます。
🧺 日常で出会う場面
提供コストは同じでも、客が支払ってもよいと考える価格レベルに合わせて異なる価格表を提示する販売戦略です。