原子力発電

原子を分裂させるときに出る莫大な熱でお湯を沸かし、発電機を回す巨大なハイテクやかんのような仕組みです。

定義 原子力発電は、ウランのような重い原子の中心(原子核)が2つに分裂するときに生まれる莫大な熱エネルギーを使って電気をつくる技術です。石炭や天然ガスといった化石燃料を燃やす代わりに、目に見えない小さな原子が分裂する際の強大な熱でお湯を沸かし、その蒸気で発電機を回します。

巨大な「やかん」と原子の分裂

原子力発電所の基本的な仕組みは、台所でお湯を沸かして湯気を出すやかんと本質的に同じです。石炭火力発電所が石炭を燃やしてお湯を沸かすのに対し、原子力発電所は原子が分裂するときに放出される熱でお湯をグラグラと沸かします。

発電所の主な燃料には、「ウラン」という重い金属元素を使います。ウラン原子の中心に中性子というごく小さな粒子をそっとぶつけると、バランスを崩した原子が2つに割れ、一瞬でとてつもない熱を放ちます。この分裂現象を核分裂反応と呼びます。

原子が生み出すエネルギーは、私たちが普段目にする化学反応とは比べものにならないほど強大です。小指の第一関節ほどの小さなウラン燃料ペレット1個(約5g)が分裂するときに出すエネルギーは、なんと石炭約1トンや石油ドラム缶約3本分をすべて燃やしたときの熱量に匹敵します。

このようにごくわずかな燃料で大量の水を一気に高温・高圧の水蒸気に変えられるため、大規模な電気をきわめて効率的かつ安定してつくることができるのです。

ウラン核分裂反応と熱エネルギー放出図 中性子 ウラン原子核 分裂した原子核 新たな中性子 膨大な熱エネルギー放出 (連鎖反応を誘発)

止まらないドミノ倒しとブレーキ役

ウラン原子が1つ分裂するとき、すさまじい熱とともに別の新たな中性子が2〜3個飛び出します。この飛び出した中性子が周りにある他のウラン原子に次々とぶつかり、連続して分裂していく現象を「連鎖反応」と呼びます。

まるで並べたドミノが1つ倒れると次々に倒れていくように、反応が途切れることなく続いていく仕組みです。しかし、このドミノ倒しを放置すると熱が一気に高まりすぎて設備が溶けてしまう危険があります。

そこで発電所では、中性子をスポンジのように吸い取る特殊な素材で作られた棒を使います。この棒を燃料の隙間に深く差し込んだり引き抜いたりして、制御棒で中性子の数をコントロールするのです。

制御棒のおかげで、連鎖反応は暴走することなく、穏やかなたき火のように安全かつ一定に保たれます。緊急時には制御棒を一気に全挿入して原子炉をピタッと停止できる安全装置も備わっています。

もう少し詳しく:消えた質量が生み出す奇跡

原子が分裂するとき、なぜこれほど強大なエネルギーが生まれるのでしょうか。反応前のウランの重さと、分裂した後にできた破片の重さを極めて精密な天秤で比べると、不思議な事実に気づきます。分裂後の破片をすべて足し合わせても、元のウランの重さよりごくわずかに軽くなっているのです。

物理学者アインシュタインが解き明かしたように、物質の重さ(質量)とエネルギーは姿を変え合える本質的に同じものです。反応の途中で跡形もなく消え去ったごくわずかな質量が、莫大な熱エネルギーに変換されて外へと放たれたのです。

原子炉で温められた高温の水は蒸気発生器へと運ばれ、別の水を沸騰させて蒸気を作ります。この高温・高圧の蒸気が、発電所内に設置された巨大な風車のようなタービンを猛烈な勢いで回転させます。

タービンの軸につながった発電機内の電磁石がグルグルと回ることで、電磁誘導によって私たちが日々家庭や工場で使っている電気が生み出されるのです。

原子力発電の原理と閉ループ循環構造図 原子炉 蒸気発生器 羽根車 発電機 復水器 発電

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

原子力発電所は管理を少しでも誤ると、原子爆弾のようにキノコ雲を上げて核爆発する。

✓ 事実

原発の燃料に含まれる核分裂性のウラン割合はわずか3〜5%程度であり、物理的に原爆のような核爆発を起こすことはありません(原子爆弾は90%以上に濃縮したウランを使います)。原発で起こりうる事故は、冷却が失われて内部の熱で蒸気や水素が爆発する現象です。

🧺 日常で出会う場面

1 小指の第一関節ほどのウランペレット1個で、一般的な家庭が数か月間使える電気を生み出せます。
2 石炭や石油を燃やさないため、発電のプロセスで温室効果ガスや大気汚染物質がほとんど発生しません。
💡 つまり ひとことで

ウランが核分裂するときに減った質量が莫大な熱に変わり、その熱でお湯を沸かしてタービンを回すことで電気をつくります。