LiDAR(ライダー)

真っ暗な夜でも、目に見えないレーザーの杖を四方八方に振り回して、周囲の立体マップを描き出すセンサーです。

定義 LiDAR(ライダー)とは、目に見えない微細なレーザー光を全方位に照射し、物体に当たって跳ね返ってくる時間を測定するセンサー技術です。光の速度をもとに距離を割り出し、周囲の空間を精密な3次元の立体マップとしてリアルタイムに再現します。

レーザーで描く、世界で最も精密な立体マップ

真っ暗な洞窟の中で、コウモリが音の反響(エコー)を聞いて障害物を避ける姿を想像してみてください。コウモリは超音波を使いますが、LiDARは音の代わりに1秒間に何百万回ものレーザー光を照射します。放たれた光が前方の壁や歩行者に当たり、跳ね返って戻ってくるまでの時間を測定する仕組みです。

光の進む速さは1秒間に約30万キロメートルと常に一定です。そのため、戻ってくるまでの時間を半分にして光速を掛ければ、対象物との距離をミリ単位の精度で割り出すことができます。

こうして集められた無数の距離データの点(ポイント)を「点群(ポイントクラウド)」と呼びます。無数の点を打って絵を描く点描画のように、コンピューターはこれらの点を繋ぎ合わせ、周囲の地形や物体の輪郭を精巧な立体オブジェのような形で復元します。

LiDAR測距原理と3D点群復元 レーザー測距 3D点群 LiDAR 光の飛行時間(ToF)測定 精密な3D形状復元

カメラやミリ波レーダーとは何が違う?

自動運転車の「目」をめぐっては、カメラ、レーダー、LiDARがよく比較されます。カメラは写真のように色や文字をはっきりと識別できますが、物体までの正確な距離を測るのが苦手で、夜間の暗闇や逆光では視界を奪われてしまいます。

一方、電波を使うレーダー(ミリ波レーダー)は、濃い霧や雨風の中でも遠くの物体をしっかり捉えます。しかし電波はレーザーに比べて波長が長いため、物体の具体的な輪郭や形までは鮮明に把握できません

LiDARはこの両者の長所を併せ持ったような存在です。自らレーザー光を放つため、漆黒の闇夜でも物体の位置や体積をセンチ単位の精度で測定できます。そのおかげで、自動運転車は目の前の障害物が人間なのか、単なる段ボール箱なのかを立体的に見分けることができるのです。

もう少し詳しく知ると

LiDARも決して万能というわけではありません。光(レーザー)を用いるため、大粒の雨や濃霧、吹雪などでは光が乱反射・散乱してしまい、測定精度が落ちるという弱点があります。そのため実際の自動運転技術では、LiDAR単体ではなくカメラやレーダーと組み合わせて互いの弱点を補い合っています。

また、かつて自動運転車の屋根の上でくるくる回転していた機械式LiDARは、部品が高価で耐久性にも課題がありました。しかし近年では、半導体技術によってモーターを使わず1枚のチップで光の向きを制御するソリッドステート型(固体型)LiDARが進化し、小型化と大幅な低コスト化が進んでいます。

iPhoneなどの最新スマートフォンに搭載されている小さなセンサーもLiDARの一種です。車載用ほど遠くまで届かないものの、暗い部屋でカメラのピントを一瞬で合わせたり、AR(拡張現実)アプリで部屋に仮想の家具を置く際に、床や壁までの3次元の奥行きを正確にスキャンしてくれます。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

LiDARはカメラのように物体の色や文字まで読み取ることができる。

✓ 事実

LiDARは距離と形状を3次元の点として記録するだけで、物体の色や標識の文字を読み取ることはできません。そのため、色や文字を認識するカメラと組み合わせて使用されます。

🧺 日常で出会う場面

1 自動運転車が道路上の歩行者や周囲の車両の位置・距離を3次元でリアルタイムに把握する。
2 スマートフォンのカメラで暗所でのピントを瞬時に合わせたり、AR(拡張現実)で部屋に家具を配置したりする。
3 考古学者が鬱蒼としたジャングルを上空からレーザー照射で透過スキャンし、樹木の下に隠された古代遺跡を発掘する。
💡 つまり ひとことで

レーザー光を照射して跳ね返る時間から、物体の距離と形状を3次元の立体マップとして正確に捉える精密センサーです。