カンガルー族

大きくなっても母親の袋から出ようとしない赤ちゃんカンガルーのように、大人になっても親の経済的な懐から抜け出せない状態を指します。

定義 学校を卒業して成人したにもかかわらず経済的に完全に自立できず、親と同居して衣食住や生活費を頼っている20〜30代以上の若年層を指す言葉です。就職難や高い住居費によって自立の時期が遅れることで生まれた、現代社会を代表する現象の一つです。

成長した大人が、なぜ親の「お腹の袋」にとどまるのか?

赤ちゃんカンガルーは、自分で生きていける力がつくまで母親のお腹の袋の中で温かく守られて育ちます。しかし、体が親と同じくらい大きくなっても袋から出ようとしなければ、母親はその重さに耐えかねて歩くことさえ苦しくなってしまいます。

人間の社会でも、これと全く同じことが起きています。大学を卒業して自分で稼ぐべき年齢を過ぎても、親の家を離れられない大人の子どもたちのことを「カンガルー族」と呼びます。単に実家で暮らしているだけでなく、食事や洗濯などの家事から毎月の生活費まで、全面的に親に頼り切っている姿を指します。

かつては20歳を過ぎたり就職したりすれば、自分で部屋を借りて一人暮らしを始めるのが当然の人生のステップでした。しかし最近では、30代を過ぎても親の経済的な防護壁の中にとどまり続ける若者の姿が、ごく日常的な光景となっています。

カンガルー族と親の扶養負担の図解 大学卒業 就職難 高い住居費 袋の中の成人した子 親の扶養負担が増加

海を越えた海外にも「カンガルー」はいる?

成人した子どもが親元を離れられない現象は、特定の国だけに限った話ではありません。形や呼び名が異なるだけで、世界中の多くの国が似たような悩みを抱えています。

アメリカでは、一度は一人暮らしを始めたものの、家賃の高騰や学生ローンの返済に耐えかねて実家に戻ってくる若者を、投げると手元に戻ってくるブーメランになぞらえて「ブーメラン・キッズ」と呼びます。イギリスでは、親の退職年金を食いつぶすという意味の頭文字を取って「キッパーズ(KIPPERS)」と呼ぶこともあります。

イタリアでは、30歳を過ぎても母親の作ったご飯を食べ、家事を任せきりにする大人を「マンモーネ(ママっ子)」と呼び、日本でも親に頼って同居し続ける独身者を指す「パラサイト・シングル」という言葉が広く定着しています。このように、若者たちが自ら巣立つ時期を先延ばしにする現象は、いまや世界共通の大きな社会的潮流となっています。

もう少し詳しく:個人の甘えではなく高すぎる現実の壁

カンガルー族と聞くと、「自ら努力せず親にすねをかじる怠け者」というネガティブな偏見を持たれがちです。しかし、この現象を単に個人のやる気や性格のせいにして片付けるには、若者たちが直面している現実の壁はあまりにも高すぎます。

就職のハードルは年々高くなり、安定した職に就くまでの準備期間が何年も長引くようになりました。さらに、高騰する家賃や住宅価格は、社会に出たばかりの新社会人の給料だけでは到底まかないきれない水準に達しています。これに奨学金(学生ローン)の返済が重なれば、自分ひとりの力で部屋を借りて独立すること自体が不可能に近くなります。

結局のところ、多くの若者にとって実家にとどまることは、甘えや快適さを求めた結果というよりも、厳しい経済状況を生き抜くためのやむを得ない生存戦略に近いのです。つまりカンガルー族とは、若者個人の怠惰ではなく、不安定な雇用環境と重い住居費負担という社会構造的な問題が生み出した結果なのです。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

カンガルー族は働く気がなく、家で遊んで暮らしている人のことを指す。

✓ 事実

会社に通って給料を得ていても、高い住居費や生活費を抑えるために親と同居し、経済的な援助を受けているならすべてカンガルー族に含まれます。

🧺 日常で出会う場面

1 大学を卒業後、就職活動が長引き、20代後半まで実家で生活費やお小遣いを出してもらっている就活生
2 働いて給料を得ているものの、家賃や敷金・礼金の負担が重く、30代半ばまで実家から通勤している会社員
💡 つまり ひとことで

成人した後も就職難や高い住居費によって自立できず、親と同居して経済的に依存している大人の子どもを指す言葉です。