ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡

宇宙の分厚いチリの霧と135億年の時間を突き抜けて見通す、強力な赤外線のタイムマシン眼鏡です。

定義 夜空の彼方、宇宙が誕生したばかりの頃に放たれたかすかな光をとらえるために打ち上げられた、人類史上最大の赤外線宇宙望遠鏡です。地球から約150万キロメートル離れた深宇宙で、濃い星間塵(チリ)を突き抜けて初期の銀河や太陽系外惑星の大気を詳しく探る任務を担っています。

なぜ目に見える光ではなく「赤外線」を見るのでしょうか?

私たちが夜空を望遠鏡で眺めると、濃いチリの雲に隠れて中が見えない「星のゆりかご」がたくさんあります。可視光(人の目に見える光)はチリにぶつかって散乱してしまいますが、波長の長い赤外線はチリの雲をそのまま通り抜けることができます。そのおかげで、星や惑星がまさに誕生しようとする隠された姿を鮮明にとらえられるのです。

もうひとつの理由は、宇宙の膨張です。138億年前の初期宇宙で生まれた星から放たれた光は、何十億年もの間、宇宙空間を旅するうちに、空間そのものが広がるにつれて光の波長も引き伸ばされて長くなりました。もともとはまぶしい可視光や紫外線だった光が、私たちに届く頃には赤外線へと変化しているのです。これを「赤方偏移(せきほうへんい)」と呼びます。

つまり、はるか遠くにある宇宙最初の銀河を見るには、どうしても赤外線をとらえる目が必要になります。ジェームズ・ウェッブはこの赤外線を集めることで、最も古い宇宙の過去を写し出すタイムマシンの役割を果たしているのです。

ジェームズ・ウェッブ赤外線観測原理図 可視光線(塵で遮断) 宇宙塵雲 赤外線(塵雲を通過) JWST望遠鏡

もう少し詳しく:ハッブル宇宙望遠鏡とは何が違う?

ジェームズ・ウェッブを「ハッブル望遠鏡の単なる画質アップ版」と思っている方も多いかもしれません。しかし、この2つの望遠鏡は世界を見る「目の種類」からして全く異なります。ハッブルは主に人間の目と同じような可視光や紫外線を観測するように設計されました。

一方、ジェームズ・ウェッブは徹底して赤外線観測に特化しています。直径6.5メートルに及ぶ18枚の巨大な六角形の黄金の鏡を広げ、ハッブルの約6.25倍もの光を集めることができます。鏡の表面にごく薄い金をコーティングしているのも、金の表面が赤外線を最も効率よく反射するからです。

活躍する舞台もまったく違います。ハッブルは地上約500キロメートルの高さで地球の周りを回っていますが、ジェームズ・ウェッブは地球から月までの距離の約4倍も遠い、約150万キロメートル離れたラグランジュ点(L2)に位置しています。

灼熱の太陽を遮るテニスコート大の日傘

赤外線は、私たちが普段感じる「熱」と同じ電磁波の仲間です。もし望遠鏡本体や鏡が少しでも温かいと、望遠鏡自身から出る熱(赤外線)のせいで、はるか宇宙から届くかすかな赤外線シグナルがかき消されてしまいます。これは、熱い体温計のまま微細な温度変化を測ろうとするようなものです。

そのため、望遠鏡をマイナス233度以下の極低温まで冷やし続けなければなりません。そこでジェームズ・ウェッブは、常に太陽・地球・月を背にして立ち、光と熱を遮断する5層構造の巨大なサンシールド(日除け膜)を展開しています。テニスコートほどの大きさがあるこの銀色の遮光膜のおかげで、太陽側が80度まで熱せられても、裏側の観測機器側はカチコチに凍りついた極低温を維持できるのです。

ジェームズ・ウェッブはこの極限の冷たさと静寂の暗闇の中で、太陽系外惑星の大気に水や二酸化炭素が含まれているかを分析し、生命の痕跡を探す名探偵としての役割まで果たしています。

ジェームズ・ウェッブ望遠鏡 5層日除けと温度差構造図 高温前面 (+85°C) 極低温背面-233℃ 5層遮光膜 黄金の主鏡 赤外線観測

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブル望遠鏡のように人の目に見えるフルカラーの宇宙写真をそのまま撮影している。

✓ 事実

ジェームズ・ウェッブは目に見えない赤外線のデータだけを収集しています。一般に公開されている鮮やかな写真は、研究や分かりやすさのために、科学者が赤外線の波長ごとの明るさを目に見える色(可視光)に割り当てて着色・合成したものです。

🧺 日常で出会う場面

1 星が生まれたばかりで濃いチリに包まれていた「創造の柱」星雲の内部を赤外線で見通し、生まれたての星々を鮮明にとらえました。
2 数百光年離れた太陽系外惑星の大気を通過した恒星の光を分析し、そこに水蒸気や二酸化炭素が存在することを突き止めました。
💡 つまり ひとことで

ジェームズ・ウェッブは巨大な黄金の主鏡と5層の遮光膜を備え、宇宙のチリを突き抜けて最古の星や地球外生命の痕跡を探る赤外線宇宙望遠鏡です。