都市ガスの着臭剤
目に見えない危険に「におい」というサイレンを付けた安全装置です。
定義 都市ガスの着臭剤(付臭剤)は、本来はにおいも色もないガスにあえて混ぜている「警告用のにおい物質」です。ガスが少しでも漏れ出したとき、人が鼻ですぐに危険を察知して換気や避難ができるように備えられた安全装置です。
ガスコンロのにおいはガス自体のにおいではありません
都市ガスの元栓を開けたときなどに感じる、ツンとした独特なにおいを嗅いだことがある人は多いはずです。このにおいはガス本来のものだと思われがちですが、実は私たちが使っている都市ガス(天然ガス)やLPガスは、水のように透明で空気のように完全に無臭の状態です。
もしガスに何のにおいもなかったらどうなるでしょうか。配管が緩んで部屋中にガスが充満しても、私たちはまったく気づくことができません。そこへ静電気の火花がひとつ散るだけで、大爆発につながる恐れがあります。
そこでガス会社は、目に見えない危険に「におい」という警報音をつけることにしました。透明なガスに、人間がもっとも敏感に反応する強烈な悪臭を混ぜて、漏れた瞬間に気づけるようにしたのが「着臭剤(付臭剤)」です。
なぜわざわざ腐った卵や玉ねぎのにおいを使うの?
着臭剤をつくる際には、非常に厳しい条件が求められます。もしイチゴや花の甘い香りを付けてしまうと、ガス漏れに気づくどころか、かえって気分良く深呼吸してしまうかもしれませんよね。そのため、日常の生活や食べ物では絶対に嗅ぐことのない不快なにおいがあえて選ばれています。
代表的なものとして、腐った卵のようなにおいがするTHT(テトラヒドロチオフェン)や、腐った玉ねぎのようなにおいを放つTBM(ターシャリーブチルメルカプタン)といった硫黄化合物が使われています。人間の鼻は硫黄のにおいに極めて敏感で、空気中にごくわずか混ざっただけでも即座に察知できるからです。
法律でも厳しく定められており、ガスが空気中で引火する危険な濃度の数百分の一という、0.1%以下のわずかな漏洩でも普通の人がすぐに気づけるよう、厳密な割合で混合されています。
もう少し詳しく知ると
ガスを使って料理しているとき、なぜあの強烈なにおいがずっと続かないのでしょうか? 実は着臭剤は、火をつけると完全に分解されるように設計されています。ガスコンロの炎の中でガスと一緒に完全燃焼してにおい物質が消えるからです。
火をつける瞬間だけフワッとにおいが漂うのは、着火する直前の一瞬に、燃えていないごく微量のガスと着臭剤が空気中へ広がるためです。火が正常についた後はにおいが消え去るため、料理の味や室内の空気を損なうことはありません。
また、着臭剤は人体に影響がない極めて低い濃度で添加されているため、においを嗅いだだけで毒物中毒になる心配はありません。ただし、においがずっと続く場合はガスが漏れ続けている証拠ですので、すぐに窓を開けて換気し、ガスの元栓を閉める必要があります。
🤔 よくある誤解
都市ガスやLPガスは、もともと腐った卵のようなにおいがする。
天然ガスの主成分であるメタンやLPガスのプロパンは、本来は無色無臭です。安全のために人工的に着臭剤を混ぜています。
ガスのにおいを嗅ぐと、着臭剤の強い毒性のせいで体に有害である。
着臭剤は人がにおいで気づける程度の極微量しか添加されていないため、人体への毒性はありません。本当に危険なのはにおい物質ではなく、漏洩したガスの引火・爆発リスクです。
🧺 日常で出会う場面
本来は無色無臭のガスが漏れ出たとき、人がすぐに危険に気づけるようあえて混ぜられている警告用の悪臭物質です。