データラベリング

生まれたばかりの赤ちゃんに絵本を見せながら「これはりんご、これはバナナだよ」と名前を教えてあげるような作業です。

定義 人工知能(AI)が自分で学習できるように、写真・動画・音声・テキストなどの元データに対し、人間が「これが何か」を示す説明や正解タグ(ラベル)を付ける作業のことです。

AIのために親切な問題集と解答を作る作業

幼い子どもに物の名前を教えるときのことを思い浮かべてみてください。りんごの写真を見せて「これはりんごだよ」と教え、犬の写真を見て「これはワンワンだよ」と丁寧に伝えますよね。こうしてたくさんの写真と名前をセットで見せ続けると、子どもはやがて初めて見たりんごや犬でも自分で見分かられるようになります。

コンピューターのプログラムもまったく同じ仕組みで学習します。人工知能(AI)は、何の説明もない写真を見ても、それが猫なのか車なのか自分では判断できません。コンピューターにとって写真は、無数のピクセルと色の数値が無意味に並んでいるデータにすぎないからです。

そこで人間が写真の中の猫のまわりに四角い枠(バウンディングボックス)を引き、「猫」というタグを手作業で付けてあげます。このようにデータ一つひとつに正しい名前を付けていく作業をデータラベリングと呼びます。AIのために世界一親切な問題集と模範解答を作ってあげているようなものなのです。

データラベリングの概念とプロセス 1. 元データ 2. ラベリング 3. 学習用データ

写真から音声まで、広がるラベリング

ラベリングは単に写真に四角い枠を描くだけにとどまりません。自動運転車が安全に走れるようにするには、道路、歩道、歩行者、信号機などをピクセル単位で細かく塗り分けて識別する、高度な画像セグメンテーションという作業が必要です。

テキストや音声のデータを扱う際にもラベリングが活躍します。顧客対応AIを作るときは、利用者が送ったメッセージが感謝なのかクレームなのかを人間が1つずつ読んで「感情タグ」を付けます。音声認識AIを学習させるときは、録音された人の声を耳で聴きながら正確に文字起こしする作業を行います。

私たちが普段便利に使っている最新技術の裏側には、数多くの人による丁寧な手作業が隠されています。データに付けられたラベルが正確であってこそ、AIも的外れな間違いをせず賢く育つことができるのです。

もう少し詳しく:正解がある学習とない学習

もう少し正確に言うと、すべてのAI学習で人間が手作業でラベルを付けなければならないわけではありません。ラベル付きデータを使って正解を当てるように訓練する方法を教師あり学習(Supervised Learning)と呼びます。

一方で、正解ラベルなしでコンピューター自身がデータの隠れた規則性や似たグループを見つけ出す教師なし学習もあります。最近では、AIが一次ラベリングを行って人間は確認・修正だけを担当したり、コンピューター自身がデータを自動生成したりする技術も急速に進化しています。

それでも、複雑な問題を的確に解決できるAIを育てるには、依然として精密で質の高いラベル付きデータが最も重要です。データに間違った正解ラベルが付いていると、AIも誤った判断を覚えてしまう「ガーベジ・イン、ガーベジ・アウト(ゴミを入れたらゴミしか出てこない)」の法則が働くからです。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

AIは大量のデータさえ与えれば、人間が手を加えなくてもすべてを完璧に自力で学習できる。

✓ 事実

AIが「何が正解か」を理解するためには、人間が1つずつラベルを付けた質の高い訓練データが不可欠です。

🧺 日常で出会う場面

1 自動運転車の学習のため、道路の走行映像に映る車や歩行者、標識の位置を四角い枠(バウンディングボックス)で囲んで指定する。
2 迷惑メール(スパム)遮断AIを作るため、メールの本文ごとに「迷惑メール」または「通常メール」のタグを付ける。
💡 つまり ひとことで

AIが自分で学習できるように、元データに正解タグ(ラベル)を付ける基礎的な作業のことです。